家破壊日記
ある街の片隅に住む少年、太郎は人懐っこく、明るい性格の持ち主でした。しかし、彼にはひとつだけ変わった趣味がありました。それは、知らない人の家を破壊することで、日記に書き留め、自身の家壊した回数を最高新記録にすることでした。
「さぁ、今日も新たな記録を作ろう!」と太郎は駆けだし、街中の住宅街を歩き回ります。彼は街の風景を愛し、人々との交流も大切にしていましたが、なぜか家の破壊に対する興味はなくなることはありませんでした。
ある日、彼が通りかかった一軒の家に目が留まりました。その家はどこか古く、その無残な姿が太郎の興奮を高めます。「これはおそらく新記録になるだろう」と彼は思いました。静かに侵入し、慎重に物を壊していく太郎の手は、まるで破壊のプロのように優雅に舞っていました。
「やった!新記録だ!」太郎は興奮しながら日記に記録をつけます。彼はその家に残された壊れた家具や荒れ果てた部屋を眺めながら、達成感に満たされていました。
しかし、数日後、太郎は同じ家の前を通りかかります。すると、その家は以前とはまるで違う姿に生まれ変わっていました。元の美しい佇まいが取り戻され、修復作業が進められていたのです。
「えっ、どうしてこんなに早く復旧したんだろう?」太郎は驚きながら、その家の前で立ち止まります。
すると、家の中から一人のおじいさんが出てきました。「あら、君はこの前の破壊の元凶の少年かしら?」
太郎は戸惑いながらも、意を決しておじいさんに声をかけます。「はい、私がその少年です。なぜこんなに早く修復されたんですか?」
おじいさんは微笑みながら答えました。「子どものいたずらだと思って、皆で助け合って家を元通りにしました。君が目指しているのは自己満足だけではなく、周りの人々にも影響を与えることなのかしら」
太郎はおじいさんの言葉に胸を打たれ、自分の行動に疑問を感じるようになります。彼は改めて自分の趣味について考えを巡らせ、自身の欲求を見つめ直すのでした。
そこから、太郎の趣味は少しずつ変わっていきました。彼は他の人々の幸せを考えるようになり、自分の能力を家の修復や地域のボランティアに活かすことにしました。
「家壊すことにだけ執着していた自分が本当に馬鹿みたいだった」と太郎は自分自身を責めながら、新たな日記を書き始めます。「毎日、一つでも多くの笑顔を作ることが私の新しい記録です!」
そして、街の人々との交流を深める中で、太郎は人々の温かさや助け合いの大切さを学びました。彼は地域のボランティア団体の一員として、家の修復やコミュニティイベントの企画に積極的に参加するようになりました。
太郎の前には家の破壊に対する欲求はなくなり、人々の幸せを考えることが彼の喜びとなっていきました。街全体が彼の変化を評価し、彼の努力が認められるようになりました。
「家破壊という過去を背負いながら、私は新たな人生を歩んでいくんだ」と太郎は心に決意し、新たなる旅立ちに向けて背中を並べ直します。
彼の物語はまだ終わりではありません。新たな冒険や出会いが彼を待っていることを、彼自身も知る由もありませんでした。