サラリーマン、異世界転生しても社畜なんですが ~ オリジナル小説
通常世界での忙しい仕事に疲れ果てたサラリーマン、翔太郎は正月休みを利用して神社へと足を運んだ。気持ちをリフレッシュさせるためにお参りをし、鳥居をくぐった途端、彼は異世界へと転生してしまったのである。
「なんだこれは…!?」
翔太郎は目の前に広がる見知らぬ風景に驚愕した。かつてはビル群が立ち並ぶ通りの中に身を置いていた彼にとって、この風景はまるで絵本の世界のようだった。豊かな自然に囲まれた異世界の風景に興味津々な翔太郎だが、勤務時間が迫っていることを思い出し、焦りが込み上げてきた。
「転生でもしてしまったのか?しかも、働かされるのか…」
現実逃避のつもりで神社に訪れたはずが、結果的に異世界でも社畜のような生活を送ることになった翔太郎。しかし、前世の経験を活かして頑張るしかないと覚悟を決める。
「よし、まずは転生後の生活に慣れるしかないな…」
そう言いながら、翔太郎は周囲を見渡す。道路を歩く人々は、ちょうど現実世界での通勤時のように、スーツを着込み、真剣な表情で歩いている。彼らは少し異様な光の球に導かれているようだった。
「あの人たちは一体何をしているんだろう…?」
翔太郎はその光の球が集まっている場所を目指して歩いた。すると、その場所は大きな建物が立ち並ぶ中心街だった。
「これが彼らの勤務先なのか…」
翔太郎は栄えた街の中で周囲を見渡し、ため息をつく。不思議と懐かしい雰囲気の中、彼はふいに声をかけられた。
「おい、君、おしゃべりしてばかりいないで仕事をしろ!」
驚きながらも、翔太郎は後ろを振り返ると、見知らぬ男性が厳しい目つきで彼を睨んでいるのを見つけた。彼は隣に立っている女性と共に、手に書類を抱えていた。
「あ、あの、すみません、私はまだここの仕事についていないので…」
翔太郎が言おうとすると、その男性は嗤いながら言った。
「仕事についていないってことは、まだ訓練が必要ってことだ。自己紹介もまだしていないだろう?」
翔太郎は言われるがまま、名前や前の職場などを詳しく話すことになった。
「じゃあ、私の名前は山田忠彦。お前はこれから私の部下として働くことになる。資料が山ほどあるから、まずはそれを整理しろ」
翔太郎は山田の指示を受け、机の前に座る。しかし、驚くべきことに、パソコンや携帯電話の代わりに、書類に記された情報を整理する羽毛ペンと羊皮紙が置かれていた。
「これがこの世界のツールなのか…」
不思議な感覚に戸惑いながらも、翔太郎は書類を開き、情報を整理し始めた。
その後も翔太郎は忙しく働き続けた。残業は日常茶飯事でありながら、残業代は一切支給されることはなかった。
「なんでこんなに働かされるんだろう…転生しても逃れられないのか」
翔太郎は時折、同僚たちと愚痴をこぼしながらも、何度も挫けそうになりながらも、それでも立ち向かっていた。
ある日、翔太郎が上司の山田とともに外出先で業務をこなしている最中、ふとしたことから山田の考え方を知ることになった。
「山田さん、なぜ残業代を出さないのですか?」
翔太郎は軽い気持ちで尋ねたが、山田の表情は一変した。
「お前に言ったことを思い出せ。我々はこの世界のルールに従って生きている。いいか、お前は自沈しないとやっていけないぞ。残業代なんてものは甘えだ、お前が仕事を遂行する責任の一環だ」
翔太郎は言葉に詰まった。彼が現実世界で働いていたときと同様、この異世界でも過酷な労働環境が存在していることを思い知った瞬間であった。
しかし、その後も翔太郎は転生後の世界で頑張り続けた。時には上司や同僚たちとの摩擦もあったが、彼は諦めることなく前に進んでいった。
そして、数年後のある日、翔太郎は山田に誘われて再び神社を訪れることになった。「お前は一度初詣に行ってみろ。この世界の神様に感謝してこい」と言われたからだ。
「山田さん、この世界に感謝することができるんですか?」
翔太郎が尋ねると、山田は微笑みながら答えた。
「お前が言ったように、この世界は過酷な労働環境の中にある。それでもお前は頑張ってきた。それが評価され、成果として返ってくることもあるはずだ。だから、感謝しろ」
翔太郎は山田の言葉に心を打たれ、お参りをすることにした。そして、神社の鳥居に手をかざし、心の中で願いを捧げた。
「今まで頑張って来たことに感謝します。これからも努力し、成果を受け取れるように頑張ります」
その瞬間、翔太郎の心にほのかな安心感が広がっていくのを感じた。
そして、これからの未来に向けて翔太郎は前に歩き出した。人生はまだまだ長い。他の世界での経験が彼にもたらすものは、自分自身が見つけることができるのかもしれない。次の一歩を踏み出し、新たな挑戦を始めるために。
「僕は、この異世界でも頑張り続ける!」